こんな方におすすめ
- 美容とビジネスの境界を、冷静に理解したい人
- 脱毛サロンの倒産ニュースを見て不安になった人
- 前払い契約や長期コースに、どこか違和感を覚えている人
脱毛と聞くと、多くの人は「美容サービス」だと思うはずです。
見た目を整える行為であり、実際に肌はきれいになります。
だからこそ、
「きれいになれるなら多少高くても仕方ない」
「美容だから仕組みはよく分からなくても大丈夫」
そう考えてしまう人も少なくありません。
ただ、誤解を恐れずに言えば、
脱毛は純粋な美容サービスではありません。
前払い契約、長期通院、途中解約の条件、倒産リスク。
これらがつきまとう時点で、脱毛はすでに
**“契約を前提としたビジネス”**です。
僕自身、20代の頃に脱毛とは真逆のジャンルである「育毛」に長年通いました。
当時は効果が分からないまま、時間とお金をかけ続け、
その価値が分かったのは20年近く経ってからでした。
その経験を振り返ったとき、
脱毛と育毛は、見た目以上に似た構造をしていると気づいたのです。
この記事では、
脱毛を否定するのではなく、
「どう捉えれば後悔しにくくなるのか」
という視点で、脱毛の本質を掘り下げていきます。
目次
現代社会で「毛」は本当に必要なのか
そもそも、毛は何のために存在しているのでしょうか。
この問いを冷静に考えると、脱毛という行為がなぜ成立しているのかが見えてきます。
本来、毛は外敵や病原菌、ケガから身体を守るための防護装置でした。
紫外線、寒さ、虫、細菌。
そうした外的リスクに直接さらされていた時代、人間にとって毛は「あるのが当たり前」であり、「なければ困るもの」だったのです。
何千年も前、人類が屋外で生活し、洞窟や簡素な住居で暮らしていた頃は、
腕や足の毛、体毛、生殖器周辺の毛に至るまで、すべてが意味を持っていました。
それは見た目の問題ではなく、生き延びるための装備でした。
しかし、現代社会はどうでしょうか。
屋内環境は整い、衣服は高性能になり、衛生環境も飛躍的に向上しました。
外敵や病原菌と常に戦う生活をしている人は、もはやごく一部です。
極端な話、今の社会で「絶対に必要な毛」は、髪の毛くらいかもしれません。
それ以外の毛は、なくても生活に支障が出ることはほぼありませんし、
むしろ「あることで困る」「不快に感じる」場面のほうが増えています。
脱毛が価値を持つ理由
毛が不要になった現代において、
「毛があることで見た目が悪くなる」
「自己処理が面倒」
「清潔感がないと思われる」
といった悩みが生まれるのは、ある意味で必然です。
社会の基準や価値観が変われば、
それに合わせて“不要なもの”の定義も変わります。
脱毛は、その変化に対応するために生まれたサービスだと言えます。
だからこそ脱毛というサービスは、
単なる贅沢や流行ではなく、
人の困りごとを解決する実用的な手段として価値を持つようになりました。
この点について、僕は脱毛業界そのものを否定するつもりは一切ありません。
むしろ、社会の変化を正確に捉え、ニーズに応えた非常に合理的なビジネスだと思っています。
問題は、脱毛が「美容」という言葉でひとくくりにされ、
その実態が見えにくくなっている点にあります。
僕が20代で体験した“育毛という契約ビジネス”
ここからは、僕自身の体験談です。
脱毛とは真逆のジャンルである育毛ですが、
ビジネスとしての本質は驚くほど似ています。
20代半ばの頃、僕は抜け毛に悩み始めました。
自分では「気のせいかな」と思っていたものの、
決定的だったのは、周囲からの一言です。
「ちょっと髪、やばくないですか?」
この言葉は、正直かなり堪えました。
当時はM字部分が怪しくなり始め、
鏡を見るたびにそこばかりが気になる日々。
まだ20代なのに、将来の自分の姿を想像して、強い不安に襲われました。
髪の悩みは、想像以上にメンタルに影響します。
自信が削られ、人の視線が気になり、
必要以上に自分を卑下してしまうようになります。
そこで僕は、育毛サロンに通う決断をしました。
効果が出るか分からない中で続けた理由
施術内容は、今思えば決して魔法のようなものではありません。
頭皮に薬剤を塗布し、マッサージや機械による刺激を与える。
家では専用の育毛剤を使い、朝晩ケアを続ける。
正直に言えば、
「これで本当に変わるのか?」
「意味があるのか?」
と疑いながら通っていました。
しかも費用は安くありません。
数ヶ月、数年単位で積み重なり、
トータルでは100万円近く使ったと思います。
それでも続けた理由はひとつです。
何もしなかった場合の未来の自分が、どうなるか想像するのが怖かったから。
やってダメだった後悔より、
やらずに後悔するほうが、僕には耐えられませんでした。
20年後に分かった「時間をかける価値」
結果的に、僕は今40代を突き進んでいますが、
髪の毛はしっかり残っています。
20代の頃より、むしろ状態がいいと感じることすらあります。
もちろん、
・あの施術のおかげなのか
・メンタルや生活習慣の影響なのか
・遺伝的な要素なのか
正確な因果関係は分かりません。
ただ一つ言えるのは、
若い頃に時間とお金をかけて「維持」に取り組んだという事実が、今の自分を支えている
ということです。
当時は効果が分からなくても、
続けたという行動そのものが、
20年後の結果につながっている。
これは、
一回で劇的に変わる美容整形や短期施術とは、
まったく別の価値だと強く感じています。
脱毛は美容ではなく、契約ビジネスである
ここで本題に戻ります。
脱毛も育毛も、
・一度で完結しない
・通い続ける前提
・効果は徐々に現れる
という共通点があります。
これはもう、
「美容」という言葉よりも、
契約を結び、時間をかけて価値を積み上げていくビジネス
と考えたほうが自然です。
言い換えれば、サブスクリプション型のサービス。
売り手と買い手が、短期的な成果ではなく、
長期的な関係を前提に成り立つモデルです。
だからこそ、
・前払い契約の仕組み
・事業者の体力や信頼性
・支払い方法の選択肢
を理解せずに契約すると、トラブルが起きやすくなります。
脱毛は、美容の顔をした「契約」です。
この現実を理解するかどうかで、
満足度も、後悔の有無も、大きく変わります。